より遠くへ、通信距離を拡張する「DJI O4 Ground Station」
産業用ドローンを運用する上で、誰もが一度は直面する「通信の切断」や「電波の死角」。特に、山の裏側や4G電波の届かないエリア、数十キロに及ぶ送電線や河川の点検において、この電波問題は長年の大きなボトルネックでした。
本記事では、これらの課題を解決するDJIの最新通信拡張ソリューション「DJI O4 Ground Station」を解説いたします。
日本国内での運用キーとなる「ゲートウェイモード」の仕組みや導入前に必ず知っておくべき電源(PoE給電)の注意点までご紹介します。
1. はじめに:ドローン運用の「距離の壁」と「死角」を打ち破る
産業用ドローンの社会実装が急速に進む中、長距離インフラ点検や山間部での飛行において、常に現場の頭を悩ませてきたのが「通信の切断」という大きなボトルネックでした。
遮蔽物による電波の死角、あるいは単純な電波到達距離の限界によって、ミッションを断念せざるを得ないケースは少なくありません。この課題を解決するために登場したのが、DJIの新たな通信拡張ソリューション「DJI O4 Ground Station」です。
本製品は、ドローンとDock間の通信を中継・拡張し、これまで飛行が困難だった環境での安全で安定した運用を実現します。
※現在DJ O4 Ground Station に対応している機種はDock 3のみとなります。
2. 過酷な環境にも耐える堅牢設計と強力な通信性能
DJI O4 Ground Stationは、単なる通信アンテナの延長線上の製品ではありません。屋外での常設や、過酷な現場への持ち込みを想定した強力なハードウェアを備えています。
- 圧倒的な通信カバレッジ: 12個のアンテナアレイによる無指向性の高ゲインアンテナを搭載。死角のない強力な信号を提供します。
-
全天候型の堅牢性: IP67の防塵・防水性能、IK07の耐衝撃性能をクリア。マイナス40℃から55℃という過酷な極限環境でも安定して稼働し、万が一の異常発生時にも「自己回復メカニズム」によってシステムを維持します。
※IK07とは40cmの高さから500gの物体を落下させたときのエネルギーに耐える性能になります。 -
RTKの範囲拡張:Dock 3から送信される位置の補正情報をインターネットを経由して送信することで途切れることなく、受信が可能です。
※DJI O4 Ground Station自身でRTKの補正情報を送信機能はありません。映像伝送の拡張がメインの機能となります。
■DJI O4 Ground Station スペック概要
| 機能/項目 | 詳細 | O4 Ground Station |
|---|---|---|
| 衛星受信・映像伝送 | GNSS周波数 | 5衛星システム、19周波数 |
| 動作周波数帯 |
sub2GHz/2.4 GHz/5.2 GHz/5.8 GHz ※日本国内は2.4GHzのみ対応となります。 |
|
| 最大信号範囲 | 40 km | |
| アンテナ | 12アンテナ | |
| 本体仕様 | 寸法 | L 170 mm, W 170 mm, H 352 mm |
| 重量 | 2.68kg | |
| IP等級 | IP67 | |
| 動作温度 | -40°C〜55°C | |
| 機能 | 運用モード | Relay Mode、Gateway Mode ※Relay Modeは日本国内未対応となります。 |
| サードパーティカメラ対応 | 対応 | |
| RID&ADS-B対応 |
対応 |
|
| スマート低消費電力モード | 対応 | |
| 自己復旧機構 | 対応 |
3. 「ゲートウェイモード」による運用
本機には2つの動作モードが用意されていますが、日本国内で運用するにあたって非常に重要なポイントがあります。
日本の電波法(5.8GHz帯の出力制限など)の兼ね合いにより、ドローンの電波を直接無線で中継する「リレーモード」は使用できません。そのため、日本での運用はインターネットを経由してクラウドシステムと接続する「ゲートウェイモード」が主役となります。
ゲートウェイモードでは、ドローンから受け取った信号をインターネット経由でクラウド管理システムDJI FlightHub 2へと接続します。
以下の画像の通り、ドローンとDJI O4 Ground Stationは2.4GHzの無線で通信し、DJI O4 Ground Stationから、FlightHub 2を通してインターネットDock3に映像やドローンの情報が送られる仕組みとなっています。

ゲートウェイモードのデータ接続の流れ
※注意:日本国内で本機を利用する際は、DJI FlightHub 2の利用が必須となります。
4. DJI O4 Ground Stationのユースケース
ゲートウェイモードを活用することで、具体的にどのような業務改革が可能になるのでしょうか。注目すべきユースケースをご紹介します。
① 長距離インフラ点検(送電線・河川など)
電力会社やインフラ事業者での活用が期待されます。鉄塔の上や見晴らしの良い場所にDJI O4 Ground Stationを設置することで、DJI Dock 3から数十キロ離れた場所まで、送電線や河川に沿った「長距離片道点検」が可能になります。

② 山間部や電波過疎地での「中継局」構築
山の裏側や、4G(携帯キャリア)の電波が届かないような過疎地でも運用ルートを開拓できます。一時的にDJI O4 Ground Stationを現地に設置し、Starlinkなどの衛星通信ルーターとLAN接続することで、インターネット経由でドローンを遠隔制御できるようになります。
これにより、複数台のドローン運用にかかっていた高額な4G通信費を削減する代替手段としても検討が可能です。
③ サードパーティ製IPカメラ(監視カメラ)との統合
本体に搭載されたLANポートに他社製のIPカメラを接続することで、そのカメラのライブ映像をDJI FlightHub 2上で直接確認・管理できます。ドローンからの空撮映像だけでなく、ドック周辺や重要施設の定点監視映像もひとつのシステム内に統合できる、画期的な集中管理マネジメントが実現します。
■監視カメラ連携例

※外部IPカメラを接続する場合、DJI O4 Ground Stationで側からカメラへ給電することはできません。カメラ用には独立した電源を別途確保する必要があります。
※DJI O4 Ground Stationで サードパーティ製IPカメラの映像を確認する場合DJI FlightHub 2のライブストリーミング時間を消費します。DJI FlightHub 2 無料版をご利用の方は必要に応じて、ライブストリーミング拡張パッケージのご購入下さい。
■検証済みサードパーティカメラ一覧
| ブランド | モデル | プロトコル | H.264ライブ映像 | PTZ制御 | アラート通知 | ファームウェアバージョン |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Dahua | DH-3H3405-ADP | ONVIF / GB/T 28181 | OK | OK | 動体検知: OK 遮蔽アラート: OK |
2.811.0000018.0.R |
| TP-LINK | TL-IPC443MEP-A2.8 PTZ | ONVIF / GB/T 28181 | OK | パン/チルト: OK ズーム: 非対応 |
動体検知: OK 遮蔽アラート: 非対応 |
1.0.4 Build 220818 Rel.66610n |
| Dahua | DH-X14M-pro | ONVIF / GB/T 28181 | OK | 非対応 | 動体検知: OK 遮蔽アラート: OK |
2.860.0000000.29.R |
| Hikvision(Haoshitong series) | HST-IPC62C-LT | ONVIF / GB/T 28181 | OK | 非対応 | 動体検知: OK 遮蔽アラート: OK |
V5.8.21 |
| Hikvision(Anxiao series) | HF-V2N-P (2.8mm) | ONVIF / GB/T 28181 | OK | 非対応 | 動体検知: 非対応 | V1.1.0 build 250702 |
| Hikvision | DS-2DC2404MW-DE3 | ONVIF | OK | OK | 動体検知: OK 遮蔽アラート: OK |
V5.9.1 |
| Hikvision | HK-Q3S5M-W | ONVIF |
非対応 (H.265ストリームのみ対応) |
非対応 | 動体検知: OK | V5.8.0 |
5. 導入前に知っておくべき「設置・電源の注意点」
DJI O4 Ground Stationですが、現場へ導入する前に必ず把握しておくべき仕様上の注意点があります。
- 給電は「PoE」のみ: 給電はWANポートを通じた「PoE(Power over Ethernet)」のみとなります。
-
単体運用時の工夫が必要: 山間部などの非定常現場(電源のない場所)に持ち込んで一時運用する場合は、「ポータブル電源 + PoE給電機器」および「Starlinkなどのインターネット通信機器」をセットで準備する必要があります。
■メーカー検証済みPoEスイッチ
| メーカー/ベンダー | タイプ | 型番 | 出力ポート数 | 給電プロトコル | 単口出力電力 | 総電力予算 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| LINOVISION | PoEスイッチ | POE-SW304G-4BT | 4 | IEEE 802.3bt Type 4(PoE++) | 90W | 120W | |
| LINOVISION | PoEインジェクター | POE-IN9001U | 1 | IEEE 802.3bt Type 4(PoE++) | 90W | 96W | |
| 速康電子/SUCOM | PoEスイッチ | SW1006GPB | 5 | IEEE 802.3bt Type 4(PoE++) | 90W | 300W | |
| シーリービジョン/シリビジョン | PoE電源 | SR-PG90W-48V | 1 | IEEE 802.3bt Type 4(PoE++) | 90W | 90W | |
| DCOMA / DCOMA | PoE電源 | PSE802BT | 1 | IEEE 802.3bt Type 4(PoE++) | 90W | 90W | |
| 輝宏時代/匯宏時代 | PoE電源 | HHT-560161GT/GB | 1 | IEEE 802.3bt Type 4(PoE++) | 90W | 90W | |
| シーリービジョン/シリビジョン | PoE電源 | SR-PG65W-48V | 1 | IEEE 802.3bt Type 3(PoE++) | 65W | 65W | -30℃〜-20℃ 利用不可 |
| 連果/連合国 | PoE電源 | LG-BTG-N601 | 1 | IEEE 802.3bt Type 3(PoE++) | 60W | 60W | -30℃〜-20℃ 利用不可 |
| TP-Link | PoE電源 | TL-POE170S | 1 | IEEE 802.3at Type 2(PoE+) | 30W | 30W | -40℃〜-20℃ 利用不可 |
| ファーウェイ/ファーウェイ | PoE電源 | AD-560062T0E | 1 | IEEE 802.3at Type 2(PoE+) | 35W | 35W | -40℃〜-20℃ 利用不可 |
| Tenda/Tenda | PoE電源 | PoE30G-AT | 1 | IEEE 802.3at Type 2(PoE+) | 30W | 30W | -40℃〜-20℃ 利用不可 |
| TP-Link | PoEスイッチ | TL-SG1005P | 4 | IEEE 802.3at Type 2(PoE+) | 30W | 57W | -40℃〜-20℃ 利用不可 |
| Tenda/Tenda | PoEスイッチ | 5ギガビット TEG1105P-4-63W | 4 | IEEE 802.3at Type 2(PoE+) | 30W | 58W | -40℃〜-20℃ 利用不可 |
| ハイクビジョン/Hikvision | PoEスイッチ | 5ギガビット DS-3E0505P-E(B) | 4 | IEEE 802.3at Type 2(PoE+) | 30W | 60W | -40℃〜-20℃ 利用不可 |
※ゲートウェイモードを使用する場合、PoEスイッチのみが対応となります。
6. まとめ
DJI O4 Ground Stationは、日本国内においては「ゲートウェイモード」を使用することで、長距離かつ極めて安定した通信網を構築できる強力なシステムです。
インフラ点検や遠隔監視などにおいて範囲の拡張を実現し、通信の課題に悩まされていたユーザーにとって、「次の一手」となる次世代ソリューションになるのではないのでしょうか。
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