【最速レビュー】新登場 DJIによるハイエンドモデルLiDAR「DJI Zenmuse L3」を紹介
高精度LiDARと高解像度カメラで、より詳細なデータが可能となったハイエンドモデルのLiDARスキャナーが登場。
圧倒的な点群取得能力
「DJI Zenmuse L3」は、最大200万点/秒、最大リターン数16というハイエンドスペックでより詳細なデータの取得が可能です。
現行機DJI Zenmuse L2が50mの低高度で飛行した際に匹敵する高精度を、なんと149mという高高度からの計測で実現。
より広範囲を効率的に、かつ安全にカバーすることが可能なLiDARとなっています。

1.Zenmuse L2とDJI Zenmuse L3のスペック比較
| 項目 | DJI Zenmuse L2 | DJI Zenmuse L3(後継機) |
|---|---|---|
| レーザー波長 | 905nm | 1535nm |
| 測距範囲(10%反射率、100klux) | 250m | 290m |
| 精度 | ±2cm | ±2cm |
| 最大点群密度 | 24万点/秒 | 最大200万点/秒 ※リターン数による |
| マルチリターン | 最大5リターン | 最大16リターン ※照射数による |
| ビーム拡散角 | 0.4mrad×1.2mrad | 0.25mrad×0.25mrad(初期値10mm) ※0.25mrad+10mm=Φ35mm@100m |
| スキャンモード | 反復/非反復 | 反復/非反復/米字 |
| FOV(反復) | 水平70°×垂直3° | 水平80°×垂直3° |
| FOV(非反復) | 水平70°×垂直75° | 水平80°×垂直80° |
| FOV(米字) | - | 水平80°×垂直80° |
| カメラ |
センサーサイズ: メカニカルシャッター 画素数:2000万画素 |
センサーサイズ: メカニカルシャッター 画素数:1億画(12k) |
| RGBカメラ視野角(FOV) | 70° | 107° |
| シャッター寿命 | 約15万回 | 約50万回 |
| 記録メディア | microSD | Cfexpress Type B |
※DJI Zenmuse L3はDJI Matrice 400のみ対応となります。
※発売前の情報となりますので変更の可能性もございます。ご了承ください。
DJI Zenmuse L2からの大きな変更点は、以下の通りです。
- 最大200万点/秒の照射数
- リターン数が最大16リターンまで取得可能
- 1億画素のカメラを2つ搭載
- スキャンパターンに米字が追加
- FOVが80°に拡張
次からDJI Zenmuse L3の特長を詳しく見ていきます。
2.DJI Zenmuse L3 進化のポイント
ポイント1:ハイエンドスペックのレーザー性能
大きな変化といえば最大秒間200万点のレーザー照射数と最大リターン数16のハイエンドレベルのスペックです。
最大照射数によって設定できるリターン数が変わるため、植生の多いところではリターン数が多い設定を使用するなど、現場によって使い分けできるモデルになっています。
■照射数とリターン数の関係
| レーザー照射数 |
リターン数 |
|
10万点 |
シングル(1) |
| 35万点 |
シングル(1) |
| 100万点 | シングル(1) デュアル(2) クワッド(4) オクタ(8) |
| 200万点 | シングル(1) デュアル(2) クワッド(4) |
また照射数によって推奨される飛行高度があります。
■推奨飛行高度
|
照射数 |
飛行高度 |
| 10万点 | 300m以上 |
| 35万点 | 300m以下 |
| 100万点 | 100m以下 |
| 200万点 | 50m以下 |
※200万点の設定で50mより高い高度で計測すると、空中ノイズが発生する恐れがあります。
さらにスキャンモードについてDJI Zenmuse L2でもおなじみの反復スキャン、非反復スキャンの2パターンに加えて、米字スキャンが追加されました。従来のスキャンパターンである反復スキャン、非反復スキャンも一緒にどのようにスキャンされているのか以下の画像よりご確認ください。
■スキャンモード比較
反復スキャン
非反復スキャン
米字スキャン
その他のDJI Zenmuse L2からの変更点は以下の通りです。
-
1535nmレーザーを採用 → 煙や霧など悪条件でも安定計測可能。例えば火山の火口の調査に使用することもできる可能性を秘めています。
-
測距範囲が250mから290mに拡大しました。
-
高高度(149m)からでも、Zenmuse L2で高度50m計測と同等の精度を実現します。
高高度からでもばらつきが少なく、点群の厚みが少ないデータが取得できます。 - FOVが70°から80°になったため、より広範囲を計測可能になっています。
- レーザー拡散角がDJI Zenmuse L2よりもさらに小さく、正円形になり、より狭い隙間をぬって、地面に到達する可能性が上がります。
ポイント2:1億画素のカメラ性能

搭載されている2つのカメラは、センサーサイズがマイクロフォーサーズの1億画素のモデルとなります。2つのカメラは外側方向を少し向いた状態になっています。
送信機上は2つのカメラが合成された横長の状態で確認できます。

※画面はプロトタイプのものです。
撮影される写真は1回のシャッターで左(L)と右(R)で1枚ずつ保存されます。

※2枚撮影されます。

※撮影写真例 赤枠は左右のラップ部分
搭載されるカメラは1億画素と2500万画素を選択できるため、撮影場所の光量で切り替えることが可能です。
例えば、夕方の光量が少ない環境で1億画素の設定をするとノイズが多くなる可能性があります。その場合は2500万画素の設定で撮影してノイズが少ない写真を撮影するなど状況によって使い分けができます。
その他にも進化したDJI Zenmuse L3のカメラの特長として…
-
FOVが107°に広がり、一度で広範囲を撮影が可能に。
-
シャッター寿命が2.5倍の約50万回に。
より耐久性が上がり、タフに使用できます。 - インターバル撮影間隔が2500万画素の場合は0.5秒間隔、
1億画素の場合は1秒間隔で撮影可能。
※カメラが斜め方向を向いているため、現状の写真測量での利用には推奨できないかもしれませんが、成果品としてでなく状況を確認するための簡易的なオルソ作成であれば十分に使用できるレベルです。
DJI Zenmuse L3の解析について
DJI Zenmuse L3の解析はDJI Zenmuse L2と同様、公式サイトからDJI Terraをダウンロードしていただければ、DJI Terra standardやflagshipのライセンスを購入しなくても解析することができます。
※DJI Terraで「プロジェクトの作成」の「LiDAR点群」でのみ処理が可能です。「可視光」での処理は対応しておりません。
注意点
取り扱うデータが大きくなったことにより、使用するパソコンのスペックもある程度のものが必要となっています。
以下パソコンの最小要件になります。
| 項目 | スペック |
| メモリ | 32GB |
|
OS |
Windows 7以降OS |
| グラフィックボード | NVIDIAコンピューティング性能6.1以上GPU |
データサイズ例:
1フライト35GB、生Lasデータ約14GB、一日作業量12フライトデータ量約420G(150m飛行の場合)
再構築可能規模:
自動点群再構築用ブロック分割アルゴリズム採用
→ メモリ32GB環境で100km²超のL3点群データ再構築をサポート
※ 再構築時はHDD空き容量に注意してください。
推奨空き領域 = 生データサイズの6倍以上
3.実際のデータ
弊社でも実際に同エリアをDJI Zenmuse L2とDJI Zenmuse L3(200万点・100万点)とスキャンモードの反復・非反復での比較する為、飛行させてみました。
走査角はDJI Zenmuse L2は70°(左)からDJI Zenmuse L3は80°(右)、同じエリアで計画し計測しました。
走査角が拡大された為、少ないコース数でもしっかりと計測範囲をカバーできるようになってます。

※DJI Zenmuse L2:4測線、DJI Zenmuse L3:2測線
実際の計測データを確認していきます。
各ペイロードを高度140mで計測し、森林や構造物の計測を行い断面比較を行いました。
■データ比較:森林の場合
DJI Zenmuse L2でも地形を確認できますが、DJI Zenmuse L3だとより地表面をしっかりと林内の地形を取得できていることがわかります。
発射点群数がDJI Zenmuse L2より大幅に増え、ビーム拡散角が小さくなっているため、より詳細な地形データを取得することができます。

DJI Zenmuse L2のデータ断面

DJI Zenmuse L3(200万点)のデータ断面

DJI Zenmuse L3(100万点)のデータ断面
また、クマザサの植生地をDJI Matrice 400でリアルタイム地形フォローを活用して対地高度50mで秒間200万点で計測しました。
テスト計測したフィールドは地形データ取得の天敵となるクマザサに囲まれています。

下の画像は取得できた点群データの断面となります。
クマザサが密集しているエリアで断面を切ってみると、データが2層になっているのが確認できます。上側の層はクマザサの葉部分、下の層は地形データとなります。
今回のフィールドでは細いビーム拡散角のレーザーが葉の隙間を通り地形データを獲得することができました。
※場所によっては地形データの取得が困難となる場所もございます。
レーザースキャナーが苦手とする背が低く密集して繁茂する植生があるようなエリアでもDJI Zenmuse L3であれば地形データが取得できるかもしれません。

※飛行諸元:対地高度50m、飛行速度5m/s、レーザー照射数200万点(クワッドリターン)、SL率50%
■データ比較:構造物の場合
DJI Zenmuse L3のレーザー波長が1535nmに変更になり、DJI Zenmuse L2のレーザー波長905nmで取得できなかった屋根の形状も、取得できるようになりました。
また非反復で計測をすることにより、高度140mでも電線形状がきれいに取得できていることが確認できます。
DJI Zenmuse L2 (24万点・非反復)

DJI Zenmuse L3 (100万点・非反復)

DJI Zenmuse L3 (100万点・反復)
■解析時間比較
DJI Terraの各モードでのデータ容量とソフトウエア解析時間を比較しました。
レーザー照射数200万点では、カメラモードを1億画素で撮影したのでデータ容量が多くなりソフトウェア解析時間は1時間20分かかっていますが、100万点ではカメラモードを2500万画素で撮影したため、ソフトウェア解析時間は11分と素早く解析ができています。

※解析諸元:DJITerra(Ver5.1.0) 前処理:精度最適化ON 平滑化OFF・点群処理:点群密度:高(100パーセント) 2D設定以下無しで解析を行いました。
※解析用PCスペック:CPU Corei7-14650HX (2.2GHZ) メモリー64GB SSD2TB GPU:GeForce RTX 5050 Laptop(8GB)
※最大スペックでの計測を行う場合、観測データの容量が大容量になるので、解析用PCのスペックや空き容量には注意が必要になります。
■点群のガウススプラッティング処理
DJI Zenmuse L3では点群のガウススプラッティング処理ができるようになりました。
より自然で見栄えの良いデータになっているのがわかります。
※ガウススプラッティングはDJI Terra flagshipの機能になります。
※DJI Zenmuse L2では使用できません。DJI Zenmuse L3のみに対応しています。
従来の点群処理
ガウススプラッティング処理
実際の利用シーン
DJI Zenmuse L3の強みは、高高度でも安定したデータ収集ができ、高い貫通率による地表面の取得が可能なことです。
従来の測量、i-constructionの現場の他に以下の活用が期待されます。
-
砕石場・山林など広大なエリアの体積計測
-
崖・火山など危険エリアでの安全な測量
-
変電所や橋梁など複雑構造物の3D計測
4.同梱品

DJI Zenmuse L3本体の他に以下のパーツが付属しています。
- DJI Zenmuse L3 シングルジンバルコネクター×1
落下防止のためのレールがついているため、より安全性を高めたジンバルとなっています。ペイロードは1.6KGまで対応です。

- 専用ハードケース×1
- ジンバルダンパー×4
- CFexpress Type Bメモリーカード(1TB)×2
- CFexpress Type Bカードリーダー×1
- DJI Matrice 400 ハードケース用インサート
DJI Matrice 400と同じケースに入れて持ち運ぶことが可能となります。

Matrice 400のハードケースに入れて持ち運び可能
- クリーニングクロス×1
- 工具類
5.まとめ

DJI Zenmuse L3は、従来のDJI Zenmuse L2から レーザー性能・カメラ・運用性 のすべてが進化しました。
特に、
-
高高度での計測でも点群の厚みが少なく、詳細で大量のデータが取得可能
-
1億画素カメラによる高品質な画像
-
悪条件での計測安定性
が大きなポイントです。
これにより、測量や点検の効率化はもちろん、これまで困難だった環境でのデータ取得が可能になります。
「他社製LiDARからの乗り換えを検討する価値あり」といえるアップデートです。
より詳細な検証内容につきましては、弊社代理店にもご協力いただいております。
より専門的な内容を検証していただいているので、続報をお待ちください!
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