宇和島市の広域防災を支えるDJI Dock 3
-常設型ドローンによる新たな災害対応モデル-

近年、自然災害の激甚化・頻発化を背景に、自治体に求められる災害対応は大きく変化しています。災害発生後の迅速な状況把握は、その後の避難誘導や応急対応、復旧活動の判断を左右する重要な要素です。
こうした中、常設型ドローンポートを活用した遠隔運用への注目が高まっています。ドローンを平時から待機させ、必要なタイミングで迅速に飛行させることで、職員が現地へ向かう前に被害状況を確認できる体制の構築が可能になります。
今回ご紹介するのは、愛媛県宇和島市におけるDJI Dockシリーズを活用した防災運用事例です。
宇和島市役所では、本庁に設置したDJI Dock 2に加え、新たに三間支所・吉田支所・津島支所へDJI Dock 3を配備し、市内を広域にカバーする運用体制を構築されています。本庁から各拠点を一元管理し、災害発生時には迅速な情報収集を行うことで、防災体制のさらなる強化を図っています。
本記事では、宇和島市の導入背景や運用体制をご紹介するとともに、DJI Dock 3が自治体防災にどのような価値をもたらすのかをご紹介します。
目次
1.自治体防災に求められるドローン運用とは
2.宇和島市がDockシリーズを導入した背景
3.Dock2からDock3へ ― 広域防災体制の構築
4.FlightHub 2による一元管理と効率的な運用
5.トリガーワークフローによる初動対応の高度化
6.導入後の変化とこれからの自治体防災
7.宇和島市の事例から見るDock3活用の可能性
1. 自治体防災に求められるドローン運用とは
近年、全国各地で豪雨や台風、地震などの自然災害が相次ぎ、自治体にはこれまで以上に迅速で的確な初動対応が求められています。
災害発生直後は、道路の寸断や土砂災害、浸水などにより職員が現地へ向かうことが難しいケースも少なくありません。そのため、限られた人員の中で、いかに早く被害状況を把握するかが、その後の災害対応を大きく左右します。
こうした課題の解決策として、近年導入が進んでいるのがドローンです。空から広範囲を確認できるドローンは、災害現場の状況を迅速かつ安全に把握できる手段として多くの自治体で活用が広がっています。
一方で、災害発生時に毎回機材を持ち出し、現地へ移動して飛行準備を行う運用では、初動までに一定の時間を要します。また、夜間や休日など、担当者がすぐに対応できない状況も想定されます。
そこで注目されているのが、ドローンを常設し、遠隔から運用できる「ドローンポート」です。
DJI Dockシリーズは、ドローンの保管・充電・離着陸を自動化し、平時から待機状態を維持することで、必要なタイミングで迅速に飛行を開始できる環境を提供します。さらに、FlightHub 2で、飛行計画の管理や複数拠点の運用、取得データの共有までを一元的に行うことができます。
ドローンを「必要なときだけ飛ばす機体」ではなく、「いつでも運用できるインフラ」として活用する。この考え方が、今後の自治体防災において重要なポイントになりつつあります。
その考え方をいち早く取り入れ、広域防災体制の強化を進めている自治体の一つが、愛媛県宇和島市です。

2. 宇和島市がDockシリーズを導入した背景
宇和島市は、愛媛県南予地域に位置し、市街地だけでなく山間部や河川、リアス海岸など、多様な地形を有しています。そのため、土砂災害や河川の増水、高潮・津波など、地域ごとに異なる災害リスクへの対応が求められます。
また、宇和島市は南海トラフ地震の想定震源域に位置しており、将来的に発生が懸念される大規模災害への備えも重要な課題となっています。
こうした背景のもと、宇和島市では早い段階からドローンを防災分野へ取り入れ、運用ノウハウの蓄積を進めてきました。
また現在では、宇和島市役所の山下部長を始めとした宇和島市消防団においても一等無人航空機操縦士の資格取得者が増えており、人材面でもより高度で強固な運用体制が構築されています。
単にドローンを配備するだけではなく、「どこで災害が発生しても迅速に状況を把握できること」を重視した点が、この取り組みの大きな特徴です。
本庁を中心とした管理体制と、各支所への分散配置を組み合わせることで、市内全域をカバーする新たな防災運用モデルが形づくられています。
3. Dock2からDock3へ ― 広域防災体制の構築
宇和島市では、本庁へDJI Dock 2を導入し、常設型ドローンの運用を開始しました。その後、市内全域をより迅速にカバーできる体制を目指し、新たに三間支所・吉田支所・津島支所へDJI Dock 3を配備しています。

このように、既存の運用基盤を活かしながら段階的に運用エリアを拡大している点も、宇和島市の取り組みの特徴です。
広域自治体では、災害発生時の状況確認が必要となる場所が一か所とは限りません。土砂災害の危険がある山間部、増水が懸念される河川、高潮や津波の影響を受ける沿岸部など、地域ごとに確認すべきポイントが異なります。
そのため、一つの拠点から対応するのではなく、それぞれの地域に近い場所へDockを配置することで、初動対応までの時間短縮が期待できます。
宇和島市では、本庁を中心とした管理体制を維持しながら、各支所へDock3を配備することで、市内を広域にカバーする運用体制を構築しました。

こうした分散配置は、災害発生時だけでなく、平時の設備点検や訓練飛行などにおいても、それぞれの地域に応じた柔軟な運用を可能にします。
広域運用を支えるDJI Dock 3

DJI Dock 3は、ドローンの遠隔運用を前提として設計された常設型ドローンポートです。ドローンの保管・充電・自動離着陸までを一体化し、平時から待機状態を維持することで、必要なタイミングですぐに飛行できる環境を構築します。また、屋外常設を前提とした高い耐候性を備え、災害対応やインフラ点検など、さまざまな用途での活用が期待されています。
対応機体であるDJI Matrice 4D/4TDは、Dock3に対応している産業用ドローンです。高性能なカメラやAI機能を搭載し、災害時の状況確認から巡視・点検まで幅広い業務に対応します。また、第二種型式認証を取得し、今後さらなる社会実装が期待される機体でもあります。
宇和島市では、Dock3を中核とした常設型ドローン運用を各支所へ展開することで、市内の複数エリアをカバーする広域防災体制を構築されています。
4. FlightHub 2による一元管理と効率的な運用
広域自治体において複数のDockを運用するうえで、必ず直面するのが「各拠点をどう効率よく管理するか」という課題です。拠点が増えるほど運用管理は複雑になり、災害発生時にそれぞれの拠点が個別に情報収集をしていては、市全体の的確な状況把握や迅速な意思決定が難しくなります。
そのため、広範囲にわたる現場の状況を一つの場所に集約し、司令塔となる本部がリアルタイムで状況を俯瞰できる環境づくりが不可欠です。その課題を解決し、宇和島市の広域運用をソフトウェア面から支えているのが、DJI FlightHub 2です。
一元管理を支えるDJI FlightHub 2

DJI FlightHub 2は、複数拠点のドローンやドローンポートを一元管理できるクラウドベースの業務管理プラットフォームです。機体の稼働状況やバッテリー残量、飛行履歴などのステータス確認に加え、オンライン上での飛行ルートの作成やミッション管理を可能にします。また、ドローンが撮影している映像の低遅延ライブストリーミングや、取得データをもとにした2D/3Dモデルの生成機能なども備えており、離れた場所にいる管理者と現場の間で迅速かつ正確な情報共有を実現します。
宇和島市では、このFlightHub 2を運用基盤として活用し、本庁をコントロールセンターとして各支所のDockを一元管理することで、市全体を俯瞰した効率的な広域防災体制を構築されています。
広域自治体では、拠点が増えるほど運用管理が複雑になります。
しかし、FlightHub 2を活用することで、点在する機体の状態や取得したデータなどをオンライン上のひとつの画面でまとめて管理できるため、複数拠点を運用する際のハードルを大きく下げることができます。宇和島市では、本庁をコントロールセンターとして運用することで、各地域の即応性を維持しながら、市全体を俯瞰した防災体制を構築しています。

このように、「現場は分散、管理は集中」という運用スタイルは、複数のDockを導入する自治体にとって大きなメリットの一つです。
5. トリガーワークフローによる初動対応の高度化
災害対応では、被害状況をどれだけ早く把握できるかが、その後の対応を大きく左右します。そのため近年は、「災害発生後に飛ばす」だけではなく、「災害発生とほぼ同時に飛ばす」運用への注目が高まっています。
DJI FlightHub 2には、外部システムからの通知などをきっかけに自動で飛行を開始できる「トリガーワークフロー」が搭載されています。

これにより、他の職員が現地へ向かう準備を進めている間にも、ドローンによる情報収集を開始でき、初動対応の迅速化につながります。
宇和島市では、このトリガーワークフローの活用も視野に入れながら、防災体制のさらなる高度化を進めています。
◆トリガーワークフローにはどのような期待をされていますか?
災害発生直後の初動対応をさらに迅速化するために、トリガーワークフローへの期待が高まっています。たとえば、緊急地震速報や特定のセンサー情報をトリガーとしてドローンが自動的に飛行を開始し、被害状況を収集する仕組みが想定されています。この仕組みによって、職員が現場に到着する前に詳細な映像や情報がリアルタイムで得られ、市災害対策本部の迅速な初動体制の確立や応急対応の意思決定がよりスムーズに行えるようになります。特に、広域災害が想定される南海トラフ地震においては、このような自動化された情報収集システムが迅速な初動体制の確立に寄与するだけでなく、被災者の生活再建を1日でも早く進めるために、罹災証明迅速化ソリューションと連携することで罹災証明書発行の迅速化も可能になります。
宇和島市役所
宇和島市企画政策部
部長 兼 危機管理監
山下 真嗣 様
もちろん、災害の種類や状況によって運用方法は異なりますが、平時から飛行ルートや運用フローを整備しておくことで、発災時にも落ち着いて対応できる環境づくりにつながります。
ドローンを活用した防災は、単に機材を導入するだけでは実現できません。平時から運用方法を整備し、自動飛行などの機能を組み合わせることで、災害時の初動対応を支える実践的な仕組みとして機能します。
6. 導入後の変化とこれからの自治体防災
このように、ドローンを「災害時の機材」から「防災インフラ」へと進化させている宇和島市。実際に運用を進める中で、どのような変化を感じているのでしょうか。運用の中核を担う、宇和島市役所 宇和島市企画政策部部長兼危機管理監 山下真嗣様にお話を伺いました。

◆ドローン導入のきっかけを教えてください。
宇和島市は総延長約340kmのリアス海岸沿いに集落が点在しているため、広範囲での災害発生時には孤立するリスクが非常に高く、県内で最も多くの孤立可能性を持つ集落数を抱える地域です。南海トラフ地震などの広域的な災害を想定した場合、市全域の迅速な状況把握が必要となるため、災害の特性や規模に応じた体制の構築が重要な課題となっています。そのような状況下で、平成30年7月の豪雨では、市内の吉田地区を中心に一部地域が被災したにもかかわらず、土砂災害による道路寸断の影響で、職員が現地に移動して状況を確認することが極めて困難となりました。この経験から、迅速な初動体制の重要性を改めて認識し、ドローン導入を決定する大きな契機となりました。
◆実際に導入してみて感じた変化はありますか?
導入後、大きな災害は発生していないものの、災害発生時の初動対応が大幅に効率化されたと感じています。従来は職員が現地へ向かい被害状況を確認する必要がありましたが、現在ではドローンによる迅速な情報収集が可能となり、初動対応の迅速化や応急対応の意思決定にかかる時間が短縮されると思っています。また、複数拠点に配置されたドローンポート(DJI Dock)を活用することで、愛媛県20市町のうち4番目に広い面積を有する広大な自治体としての防災力が向上し、市内の主要な住宅密集地域を効果的にカバーする体制が整いました。
◆本庁以外にもDock3を追加した理由は何ですか?
宇和島市は平成の大合併により1市3町が統合され、現在、3つの支所を有する自治体であり、愛媛県内では4番目に広い面積を持っています。そのため、本庁だけでなく各支所にドローンポートを配備することで、地域ごとの災害リスクに迅速に対応できる体制を構築しました。土砂災害や河川の増水、沿岸部の高潮など、多様な地形特性に対応するため、広域カバーが求められる中、Dock3を導入して防災力をさらに強化しました。
◆FlightHub2を活用するメリットは何ですか?
FlightHub2を活用することで、本庁から各支所に配置されたDockの運用状況を一元的に管理できます。複数拠点のドローンの稼働状態や飛行履歴をリアルタイムで確認できるため、管理負担が軽減されます。また、定期巡回や災害時の飛行計画を効率的に作成・管理することが可能になり、広大な自治体ならではの防災体制を効率化する大きなメリットがあります。
◆運用体制の構築や人材育成は、どのように進められましたか?
宇和島市は、市域の防災体制の構築を目指し、段階的かつ実効性の高い運用体制を整備してきました。その過程において、日本コンピューターネット株式会社(NCN)からの支援は、重要な役割を果たしています。
DJI Dockに関しては、まず本庁にDJI Dock 2を設置し、先行運用を開始しました。その後、運用実績から得たフィードバックを参考に、三間支所・吉田支所・津島支所へのDJI Dock 3の追加配備を決定しました。このように、運用エリアを着実に拡大し、広域対応を視野に入れた防災モデルの構築を進めています。
人材育成面では、宇和島市の職員および消防団員を対象に訓練を実施し、初期段階においてはDJI CAMPスペシャリスト資格の取得を推進しました。また、消防団員については、総務省消防庁の「消防団の力向上モデル事業」の支援を受け、一等無人航空機操縦士資格の取得を目指しました。国家資格の取得に伴い、NCNは体系的かつ高度なトレーニングを提供し、運用管理の中心的な役割を担う人材の確保を進めました。
さらに、日常的な運用の中で知見を蓄積するため、平時には地域ごとの訓練飛行を実施し、技術精度の向上に努めています。特に災害発生時には、迅速で緊急性の高い情報収集オペレーションが円滑に実行できるよう、運用フローの整備と改善にも注力しています。
◆今後はどのような活用を考えていますか?
今後は、災害対応をさらに高度化するため、市独自の運用フローを整備したいと考えています。具体的には、緊急地震速報などをトリガーにしてドローンが自動飛行を開始する仕組み(トリガーワークフロー)の導入を進め、災害発生直後から被害状況をいち早く把握できる体制作りを目指します。また、災害時の利用だけでなく、インフラ点検や環境モニタリングなど日常的な業務にもフェーズフリーにドローンを活用することで、実効性を高め、より広範な効率化を図りたいと考えています。
◆同じような自治体へメッセージをお願いします。
自然災害が増加する現代では、迅速かつ的確な情報収集が初動対応や住民の安全確保において極めて重要です。当市では、ドローンおよび常設型ドローンポートを防災インフラとして活用することで、広大な自治体特有の課題に対応してきました。この取り組みにより、災害時の状況把握が効率化されるだけでなく、平時から防災体制の継続的な改善が進められています。
ドローンの活用には初期導入や運用整備の面で課題があるかもしれませんが、技術の活用によって得られるメリットは非常に大きいと実感しています。他自治体の皆様も、各地域特性や課題に適した運用方法を検討し、防災力を向上させる一歩を踏み出していただきたいと考えています。また、自治体間の情報共有と連携を進めながら、住民の安全・安心を守る取り組みをともに進めていきましょう。
宇和島市役所
宇和島市企画政策部
部長 兼 危機管理監
山下 真嗣 様
7. 宇和島市の事例から見るDock3活用の可能性

宇和島市の取り組みは、単にドローンやドローンポートを導入した事例ではありません。
平成30年7月豪雨の経験や、南海トラフ地震への備えといった地域特有の課題を踏まえ、「災害発生時に、いかに迅速かつ安全に情報を収集するか」という目的に対して、防災体制そのものを見直した事例といえます。
本庁で運用していたDJI Dock 2を基盤としながら、新たに各支所へDJI Dock 3を配備することで、市内を広域にカバーする運用体制を構築しました。さらに、FlightHub 2による一元管理やトリガーワークフローを組み合わせることで、初動対応の迅速化や効率的な運用を目指しています。
近年は、豪雨災害や地震だけでなく、台風や線状降水帯の発生など、自然災害が激甚化・頻発化する傾向にあります。こうした状況の中で、自治体に求められるのは、発災後に現場へ向かう体制だけではなく、発災直後から状況を把握し、迅速な意思決定につなげられる体制づくりです。
その実現に向けて、常設型ドローンポートの活用は有効な選択肢の一つとなっています。
DJI Dock 3は、遠隔運用や自動飛行に対応した常設型ドローンポートとして、災害対応はもちろん、インフラ点検や巡視など幅広い用途で活用が期待されています。平時から継続的に運用することで、災害時にもスムーズな運用へとつなげることができ、自治体における新たな防災インフラとして、その可能性が広がっています。
宇和島市の事例は、広域にわたる行政区域を持つ自治体や、山間部・河川・沿岸部など多様な災害リスクを抱える自治体にとって、今後の防災体制を検討する上で参考となる取り組みではないでしょうか。
自治体や企業によって、抱える課題や運用環境はさまざまです。だからこそ、実際の運用を見据えたシステム設計や運用フローの検討が重要になります。
宇和島市の取り組みは、防災分野における常設型ドローン運用の可能性を示す一例です。この事例が、同様の課題を抱える自治体や企業の皆様にとって、新たな防災・危機管理体制を考えるきっかけとなれば幸いです。
■本事例の導入・運用サポートを行った日本コンピューターネット株式会社様について
日本コンピューターネット株式会社(NCN)(https://www.ncn-drone.com/index.html)は、自治体・企業を中心に、ドローンの導入支援から運用体制の構築、操縦者育成、災害対応・防災訓練までを一貫してサポートしています。特に自治体防災の分野では、単なる機体の導入にとどまらず、地域特性や災害リスクを踏まえた機体・システムの選定、飛行ルートや運用フローの設計、訓練、実運用を見据えた体制づくりを支援しています。
災害時にドローンを確実に活用するためには、平時から「誰が、どのように、どの機体を運用するのか」を具体化しておくことが重要です。NCNでは、これまで培ってきたドローン運用の知見を活かし、各自治体の課題に合わせた実践的な防災・危機管理体制の構築をサポートしています。
ドローンを活用した自治体防災、災害対応、常設型ドローンポートの導入・運用についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。
日本コンピューターネット株式会社(NCN)
渉外課 沖 裕介
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