電波の届かない山岳地帯で飛行成功!上空SIM飛行を使って3Dガウススプラッティングの点群が生み出す、次世代の山の生態調査
山岳地帯など、見通しが悪く従来の電波が届きにくい環境でのドローン運用は、常に「通信ロスト」のリスクと隣り合わせです。しかし今回、DJIの最新産業用ドローンと「上空SIM飛行(KDDIスマートドローンの上空電波(4G LTE))」を組み合わせることで、道なき山へ足を踏み入れることなく、安全かつ高精度なデータ取得に成功しました。
本記事では、実際の中国地方での山岳生態調査の現場で直面した課題と、それをいかに最新テクノロジーで乗り越えたのか、その全貌をご紹介します。

※画像はDJI Matrice 400+DJI Zenmuse L2を搭載した状態です。これからご説明する3DガウススプラティングについてはDJI Zenmuse L3を搭載して取得した点群で作成しています。
1. 使用機材とネットワークの事前準備
今回の事例では、以下の最新機材を使用しました。
-
機体: DJI Matrice 400 + DJI Zenmuse L2 / L3
-
送信機: DJI RC Plus 2 Enterprise Enhanced
-
通信モジュール: DJI Dongle 2
-
基地局: D-RTK3

まず機体(DJI Matrice 400)にDJI Dongle 2を接続し「上空SIM」を挿入。続いて、送信機(DJI RC Plus 2 Enterprise Enhanced)にもDJI Dongle 2を取り付け、「地上SIM」をセットしました。そしてAPN設定をそれぞれで行いました。


上空でのモバイル通信利用には事前の電波法に基づく申請が必要となりますが、今回初めて上空SIMを利用されるお客様からは「思っていた以上に楽々と事前申請が完了して驚いた」とのお声をいただき、導入のハードルが年々下がっていることが伺えます。
2. 山岳地帯での実飛行:OcuSync4の限界と上空SIM飛行の威力
準備を整え、いざ現地の山岳地帯へ向かいました。 深い木々に覆われ、地形の起伏が激しい山林では従来の標準伝送システムである「OcuSync 4」の電波では障害物に阻まれ、やはり機体まで通信が届きませんでした。
今回は4つの場所を自動航行で行ったのですが、一番大きなところでの面積がざっくり測って95ヘクタールありました。(東京ドーム:約20個分・東京ディズニーリゾート(ランドとシー)を合わせた広さとほぼ同じ面積の広大な山の大きさでした。)

そこで真価を発揮したのがKDDIスマートドローンの上空電波(4G LTE)による通信です。 現場はもともと4Gの携帯電波自体が微弱なエリアであったため、飛行中は映像が途切れ途切れになる場面もありました。しかし、機体の制御を失うことはなく、なんとか最後まで予定の飛行ミッションを完遂することができました。
※下記画像は現場のイメージ画像です。
4G LTE電波が高度100mのエリアでもあまりない場所でございました。今回飛行したときは映像がやはり途切れ途切れにはなってしまいました。(このようなエリアの飛行は推奨はしません)

下記のように上空SIM飛行が出来たエリアもあれば・・・
途中で接続状況が怪しくなってしまい、送信機画面がグレーアウトしてしまう場所もありました。

ただし最終的には全エリアの飛行が成功しました!
最大のメリットは、「パイロットが重い機材を背負って、道なき山の中へ入る必要が全くなかった」ことです。実際にこの飛行が出来なかった際は山に入る予定だったとの事です。安全な拠点から遠隔で山岳調査を終えられたことに、お客様も非常に喜ばれていました。
3. D-RTK 3の通信障害と、PPK(後処理)によるリカバリー
通信面での課題をクリアした一方で、測位データの取得にも山岳特有のハードルがありました。 山の地形が干渉してしまい、D-RTK 3の補正電波の受信状況が悪化してしまったのです。

※飛行エリア上部の一部の飛行経路が赤くなっている所が、RTK取得状況が悪かった所です。
しかし、飛行後に電子基準点で後処理PPK処理を実行することで、取得した測位データを補正し、最終的には極めて正確な座標データを算出・担保することができました。現場でのリアルタイム通信が不安定でも、後処理で高精度な結果を導き出せるのは、信頼性の高いシステムならではの強みです。

LiDAR測量を上空SIM飛行を行う際に同じような問題に直面される方が多いと思いましたので、上記の方法であれば正確な測量を行うことも可能でございます。
4. 息を呑む成果物:L3の3Dガウススプラッティングの感動
今回のお客様は、山の生態調査や樹木の種類の研究をされている専門家でした。そのため単なる地形データではなく、木々の質感や葉の一枚一枚までが把握できるようなリアルな表現が求められました。DJI Zenmuse L3であれば、3Dガウススプラティングでの解析も可能ですので、それで結果を出してみました。

取得したデータを最新のレンダリング技術である「3Dガウススプラッティング(3D Gaussian Splatting)」を用いて処理した結果、従来の3Dモデルとは一線を画す、非常に立体的で美しい映像空間が生成されました。
完成したデータをご覧になったお客様からは、「こんなに綺麗に森が再現できるのかと感動しました」という最高のお褒めの言葉をいただくことができました。
また3Dガウススプラッティングではないのですが、DJI Zenmuse L3の優秀なLiDARカメラのおかげで、山の起伏についてもほぼ漏れがなく点群情報を取得することが出来ました。山を丸裸にすることも、これなら簡単にできてしまいます。またビーム系が細いので、送電線についても点群が取得できているのは流石だと思いました。

断面も切ってみましたが、雪が少し残っている状態でも、しっかりと地形のデータが取得できたのが分かりました。

まとめ
今回の事例から、以下のことが実証されました。
-
上空SIM飛行は、従来の無線伝送が届かない山岳地帯において、パイロットの安全を確保する強力な切り札になる。
-
地形干渉によるRTKの受信不良も、PPK(後処理)によって高精度な座標データへとリカバリー可能である。
-
3Dガウススプラッティングを活用することで、樹木一本一本の判別が必要な生態調査においても、専門家を感動させるレベルの出力が可能である。
最新のドローン技術と通信インフラの掛け合わせは、これまで「不可能」や「危険」とされていた現場の常識を覆します。山岳調査やインフラ点検でお悩みの方は、ぜひ上空SIMを活用した新しいドローン運用の形をご検討ください。
上空電波のお問い合わせ先
上空電波パッケージの詳しい情報は、こちらからご確認ください。
また上空電波に関するお問い合わせは、お気軽に下記のお問合せフォームからお申込みください!
少し興味があるという段階でも構いません。KDDIスマートドローンの担当者よりご連絡させていただき、お客様のお困り事のご相談に乗らせてさせていただきます。
※DJI Cellular Dongleおよび各種SIMカードのご契約は、お客様とKDDIスマートドローン株式会社とのご契約となります。