【事例】DJI Dock製品による全自動流量観測を実証!河川管理DXに向けた無人・反復観測モデルとは 「一般財団法人 北海道河川財団・株式会社 安田測量 事例」
本事例では、ドローン測量の豊富な「現場力」と高度な「システム開発力」を持つ株式会社安田測量様が「DJI Dock 2」を活用し、人の手で行われてきた危険な河川観測を遠隔監視のみで完結させた取り組みをご紹介します。観測からデータの自動解析、レポート共有までを完全に仕組み化した、インフラ管理DXの最前線に迫ります。
目次
1.検証目的:なぜ「流量観測のDX」が必要なのか?
流量観測は、災害規模を定量化し、防災判断や河川計画を支える重要な基礎データです。しかし、近年は豪雨の頻発化、激甚化により、これまで以上に高い安全性、即応性、持続性が求められています。

増水により危険が伴う従来の河川現場(※画像はイメージです)
従来の方法には、以下の大きな課題がありました。
- 悪天候や増水時の現地作業が必要となり、視界不良や強風下での転落など安全確保が難しい。
- 観測には準備が必要なため、すぐ現場に向かえないなど即時の現場対応に限界がある。
- 橋や見通し断面などの観測施設に依存しているため、洪水時にそれらが損傷・流失してしまう恐れがある。

これに対し、株式会社安田測量様が挑んだのは「単にドローンを飛ばして撮影すること」ではありません。同社が持つ高度な測量技術と水文学的知見を掛け合わせ、観測員の立ち入りをなくし、河道の面的な流速と水位分布を取得して「流量観測そのものをDX化すること」を目指しました。
【従来法・従来の非接触法との決定的な違い】
流量観測の手法は、これまでも安全性を求めて進化してきましたが、今回のシステムはさらに一歩先を行くものです。

- 浮子(ふし)による観測 (従来法) 川に目印を設置し、浮子を投げ入れて流速を測る昔ながらの手法ですが、増水した川岸での作業となるため非常に危険です 。また、特定の断面(線)のデータしか取れません 。
- 電波(レーダー)や固定カメラによる観測(従来の非接触型) 近年普及してきた手法で、川に入らないため安全性は向上しました 。しかし、機器を橋などに固定する必要があるため洪水時に流されるリスクがあり 、また浮子と同様に特定の測線(線)の流速しか測れないという限界がありました 。
- DJI Dock 2を活用した無人ドローン観測(今回の新手法)上空から広範囲を撮影・レーザ計測するため、固定設備が不要で流出リスクがゼロになります。最大のメリットは、線ではなく「面的な流速」と「面的な水位分布」を同時に計測できる点です 。これにより、川全体の複雑な水の動き(流況)を圧倒的な情報量で捉えることが可能になりました。
2. システムの考え方:3つのDX技術を統合
株式会社安田測量様が独自に構築した本システムは、最新の建設DX技術である「非接触型計測」「無人反復運用システム」「自動解析処理システム」の3つを統合しています。
最大の特徴は、事前に飛行経路や日時、解析パラメータなどを設定しておくことで、出水時に以下のプロセスをすべて自動で反復実行できる点です。
- 定時自動飛行とデータのアップロード・充電。
- データの自動取得と各種解析。
- 統合レポートの作成と送信。
このように、撮影後の処理まで含めて仕組み化されていることが、通常の空撮事例との大きな違いです。


3. 検証概要:実際の増水河川でテスト
有効性を確認するため、北海道中札内村にある一級河川「札内川」で実証実験を行いました。対象としたのは、ダムに貯留した水を短時間に放流する「フラッシュ放流(人工洪水)」時の流況観測です 。

普段の札内川(左)と、フラッシュ放流により増水した札内川(右)の比較
【観測の概要】
- 対象区間:約500m(川幅約400m、河床勾配約1/100、計画流量300 m3/s)。
- 観測時間:2025年6月24日の9時〜15時(6時間)。
- 観測頻度:1時間ごとに合計7回の自動観測を実施し、水位と流速を測る。



4. 前日準備と当日観測の役割分担
現場の作業負担を抑えつつ継続的な把握を可能にするため、観測は前日と当日に役割を分けて行われました 。
- 放流前日(6/23):「DJI Matrice 350 RTK」とレーザスキャナ「DJI Zenmuse L2」を用いて、基準面となる河床形状を取得。
- 当日(6/24):「DJI Dock2」と小型ドローン「DJI Matrice 3D」1台のみで、流速分布と水位分布の反復計測に集中 。
- 流速分布は動画撮影からPIV(粒子画像流速測定法)解析で算出し、水位分布は写真点群測量で取得する設計です。
流速分布は動画撮影からPIV(粒子画像流速測定法)解析で算出し、水位分布は写真点群測量で取得する設計です。特筆すべきは、ドローンの内部パラメータや撮影時の姿勢角(RTK・IMU)を自動で読み込むことで、増水時で設置不可能な「標定点(GCP)」を用いずに高精度な幾何補正を行い、表面流速を算出している点です 。

5. 使用したDJI Dock2と無人運用
今回使用したのは、全天候対応の屋外設置型「DJI Dock 2」です。
ドローンの離着陸、充電、保管を行う無人運用の拠点として機能します。
(※現在はさらに高性能な後継機「DJI Dock 3」が登場しています。詳しくは記事末尾をご覧ください)

ドローンの離着陸、充電、保管を行う無人運用の拠点として機能します。流量観測のような危険な業務において、この『拠点化』が実運用上の大きな意味を持ちます。
平時は閉じた状態で待機し、飛行時には自動で開封して離陸準備を整えます。その後、周囲の風速など安全条件を確認したうえで離陸します。

6. 計測からレポート送信までを自動化
本システムの実務的な強みは、計測だけで終わらないことです。取得したデータは自動処理され、以下のような情報がレポートとして関係者へ送付されました。
・水深の時刻変化や、水位の横断分布。 ・表面流速の平面分布、オルソ画像、標高モデル、現地状況写真など。
この全自動化の裏側では、DJIのクラウドシステム「FlightHub 2」と、安田測量様が独自開発したAPIがシームレスに連携しています。飛行ルートの設定から定時自動飛行の指示、取得した写真・動画のクラウドへのアップロードまでは「FlightHub 2」の標準機能を活用。

※DJI Flight Hub 2の管理画面。離着陸から計測まで全自動で行われるが、安全設計として常に遠隔からシステム上で飛行状況を監視した。
そこから先の処理は、独自のAPIによって以下の流れで完全自動化されました。
-
指定フォルダの監視およびクラウドからの自動ダウンロード。
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対象の写真・動画に対する自動解析(SfM・PIV)。
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各種解析結果と時系列データ、撮影写真を規定のレポート様式に統合。
-
行政(河川管理者)へのレポートの自動配信。


※一連の実施状況(上)と詳細なタイムスケジュール(下)。ドローンが充電している間にデータのダウンロードや解析を並行処理する設計となっており、撮影から約2時間後には最初のレポートが発出され、以降は1時間ごとに自動配信され続ける仕組みが構築されている。
実証では、1時間間隔で7回連続の観測を行い、すべてで計測・送信に成功しています。

7. 驚きの計測結果:高い精度を実証
- 水位・水深:事前に計測した河床形状と当日の水位の差から算出し、設置した圧力式水位計の実測値と概ね一致しました 。
- 表面流速:ドローンの動画をもとにPIV解析を行い、最大流速が9時時点の約3 m/sから、13時には約5 m/sへ増加するなど、流況変化を平面的に捉えることができました。
- 流量:後述のSIPの事業として採用した「画像解析技術を用いた河川流速場の計測方法」*1を、今回の自動システムに合わせて株式会社安田測量様が独自に応用・改良して活用しました。算出結果は、ピーク時(13時)の平均流量で100 m3/sとなり、ダム放流量(106 m3/s)に対して誤差約6%という精度の高さです。
*1 令和4年(一財)ソフトウェア情報センタープログラム登録済P第11254号-1



8. 導入効果と今後の課題
今回の実証を通じて、以下の効果が確認されました。
- 安全性:機材設定後は現地での人的作業がゼロになる 。
- 即応性:豪雨や出水後でも遠隔から即時の飛行指令が可能 。
- 持続性:橋や見通し断面等の観測施設が不要なため、持続的な計測が可能 。
- 住民説明の質の向上:避難や放流の判断を、局所的な数値(点)ではなく「川全体の流れの状態(面)」として視覚的に提示できる 。
一方で、現状のシステムでは高度なプログラム技術が必要であり、今後は一般化し、より汎用性の高いシステムへ改良していく必要があります。また、DJI Dock 3のような最新機種の登場により、寒冷地や悪天候下での運用ハードルがさらに下がり、インフラ管理への実装が加速することも期待されます。

9. まとめ:現場の知見と新技術の融合が切り拓く、河川管理DXの未来
【システム構築における最大の壁:技術融合の難しさ】
システム構築を牽引した株式会社安田測量様によると、この「無人・全自動流量観測システム」の構築において最もハードルが高かったのは、まさに「技術融合の難しさ」だったと言います。
「ドローンの制御や運用、画像解析、測量技術、そして水文学的知見を総合的に組み合わせる必要があり、一つの分野の知識だけでは実現できませんでした。また、河川のように環境変動が激しい現場で、ドローンを完全自動で飛ばし続け、河川管理に最適化したシステムを作ることにも苦慮しました」
この壁を突破できたのは、同社がこれまで培ってきたドローン測量の「現場力」と、各種システム開発の「開発力」、そして各分野の専門技術者の見事な連携でした。
(※なお、現在はDJI FlightHub 2の機能がさらにアップデートされているため、システム運用面は当時よりも容易になっているとのことです)
【株式会社安田測量様が構築した新システムの3つの強み】
今回の実証が示す最大のメッセージは、「DJI Dock 製品の価値は自動離着陸だけでなく、観測から解析、共有までを完全に仕組み化できる点」にあります。株式会社安田測量様が構築した本システムの強みは、大きく以下の3点に集約されます。
-
完全無人化:従来の流量観測のように専門技術者が危険な現場へ行く必要がなく、DJI Dockシリーズ自体が「常設の無人観測所」として機能します。
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即応性:人が立ち入れない豪雨や出水の直後でも、遠隔から即座に飛行指令を出して必要なタイミングでデータ収集が可能です。
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全自動化:観測から管理者へのレポート報告までを全自動で完結。遠隔でドローンの状況を常時監視できるため、高い安全性も担保されています。
現場の知見とDJI Dockシリーズが掛け合わさることで証明された、この新しい河川観測の形。この仕組みが一般化していくことで、河川管理DXの実装がさらに一歩前に進み、より安全で持続可能なインフラ管理の実現が期待されます。
【本実証実験の背景と実施体制について】
詳細なプロジェクト背景および実施体制は以下の通りです。

取材協力
共同研究開発機関:一般財団法人 北海道河川財団
作業機関:株式会社 安田測量
建設コンサルタントとして長年培った測量・設計の知見と、最新のデジタル技術を融合させ、建設DXを牽引するトップランナーです。
【会社概要】
- 代表者:安田 晃昭
- 所在地:〒322-0021 栃木県鹿沼市上野町122-1
- 営業品目:測量業務、建設コンサルタント業務、補償コンサルタント業務、各種調査業務、許認可手続業務、数値水理解析業務
- 連絡先:TEL 0289-64-6473
最新モデル「DJI Dock 3」のご案内
本事例では実証実験当時の機材である「DJI Dock 2」が使用されていますが、現在はさらに進化を遂げた最新モデル「DJI Dock 3 」が登場しています!
- わずか10秒の圧倒的なスピード離陸:緊急時でも即座に上空へ展開し、初動対応の迅速化を極限まで高めます。
- 機体性能とRTK感度の大幅な向上:アンテナ性能が向上し、カバー上に雪が30cm積もった状態でも安定してRTK信号を受信可能。
- 寒冷地・悪天候下でのタフな対応力:堅牢な設計と強力な駆動モーターにより、凍結して氷柱ができた状態でも、氷を割りながらカバーを開閉可能。
本事例のような過酷な環境下での定点観測・インフラ管理DXをさらに強力にサポートします。
導入や運用に関するご相談は、DJI正規一次代理店のシステムファイブ までお気軽にお問い合わせください。
▶ DJI Dock 3 の詳細・製品ページはこちら
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